落ちている日に、ムリに上を向かなくていい|ポジティブになれない日の「感情の階段」

「落ち込んでる場合じゃない」

「感謝しなきゃって思うのに、ぜんぜん感謝できない」

「ポジティブでいようとするほど、しんどくなる」

そんなふうに、自分にムチを打っていませんか。

気分が沈んだ日ほど「こんなのダメだ」と焦って、明るい言葉を必死で唱えて、それでも何も変わらない。落ち込んでいる自分に、もう一回落ち込む。 そういう二段構えの苦しさを、私は何年も続けていました。

なぜ「ポジティブにならなきゃ」が効かないのかは、第1章でお話ししました(ネガティブ思考をやめようとするほど、苦しくなる理由)。今日はその先です。じゃあどこを目指せばいいのか、その地図をお渡しします。

※読んでいてつらくなったら、途中でやめて大丈夫です。深い傷は、ひとりで掘らずに専門家と一緒に見ていくのが安全です。

心の状態を「階段」として見てみる

気持ちには、階段のような段差がある。 そう考えてみると、いろんなことの説明がつきました。私は、地下からいきなり最上階へ飛ぼうとしていただけだったんです。

下のほうから、ざっと並べてみますね。

– 無気力・恥……力そのものが抜けている状態。「どうせ無理」「私なんて」
– 恐れ……心配でいっぱい。でも、守りたい何かがまだある状態
– 怒り……「なんで私ばっかり」。エネルギーが戻ってきているサインでもある
– 悲しみ……怒りのふたが開いたあとに出てくる、本音のほう
– 勇気……「まずやってみよう」。自分で動かせるものがある、という感覚が戻る
– 中立・おだやか……「人それぞれだよね」と力が抜ける。良し悪しをつけずにいられる

この上に「感謝」や「愛」を置く並べ方もあります。でも、この記事では置きません。いちばん上に置いた瞬間、そこにいない自分が減点対象になってしまうからです。それでは、この記事で言いたいことと逆になります。

それから、正直にお伝えしておきます。この並びは心理学の定説ではありませんし、段階に数字をつけて説明する人もいます。私はそれを「そういう見方もある」として受け取っていて、順番も人によって入れ替わると思っています。使ってほしいのは、数字でも正しさでもなく、「順番のイメージ」だけです。

「感謝しなきゃ」が、しんどい理由

ここでお伝えしたいのは、たったひとつです。

この階段に、エレベーターはありません。

地下にいる人に「屋上の景色はきれいだよ」と言っても、届かないんです。景色が悪いからではなく、距離が遠すぎるから。

無気力のまっただなかにいる人が「すべてに感謝しよう」と言われても、何も感じられないのは当たり前です。心が冷たいからでも、努力が足りないからでもありません。

なのに私たちは、こう解釈してしまいます。

「感謝できない私は、やっぱりダメなんだ」

こうして、上を向こうとした結果、もう一段下がる。私が長いあいだハマっていたのは、この落とし穴でした。

無気力の人にとっては、「怒り」ですら一段上

これは、私がいちばん驚いた話です。

動けないほど力が抜けている状態から見ると、怒りは「ひとつ上の段」にあたる、という見方があるんです。

怒りは、よく「よくない感情」として扱われますよね。でも、怒りが出るということは、そこにまだ守りたい自分がいるということでもあります。感情がすっかり凍りついた状態では、怒ることさえできなくなることがあるからです。

だから、ずっと何も感じられなかった人に「なんで私ばっかりなの」がふっと湧いてきたとき。それは悪化ではなく、動き出したサインかもしれません。

ただ、ここは慎重にお伝えしたいところです。

怒りは「通過する段」であって、住む場所ではありません。 そして、湧いてきた怒りを人にぶつけることとは、まったく別の話です。安全な出し方は、このあとのワークでお伝えしますね。

「よし、怒ろう」とはならない。だから、こうします

……と、ここまで読んで思いませんでしたか。

「理屈はわかった。でも、無気力の日に『よし、怒ろう』なんてできない」

そのとおりです。私も、できません。怒りは決めて出すものではないので、「一段上がろう」と気合いを入れても、下の段からは何も起きないんです。

なので、無気力の段でやることを、はっきり決めておきます。それは感情をつくることではなく、感情が動ける状態に、体と生活のほうを戻すこと

無気力というのは、感情がなくなっているというより、感情が出てこられないくらい全体が止まっている状態に近い、と私は感じています。だから順番はこうです。

  1. 体を先に動かす(3分だけ外に出る、首の後ろをあたためる、部屋の空気を入れ替える)
  2. そのうえで、「今日いやだったこと」をひとつだけ声に出す

2つめは、立派な怒りじゃなくていいんです。「暑い」「返事するの、だるい」「あの言い方、ちょっとや」。この程度で十分です。むしろ、この程度から始めます。

これが、無気力の日にできる、いちばん現実的な一段です。「感謝を探す」より、はるかに手が届きます。

下の段が「悪い」わけではありません

この階段は、人の優劣を決めるものではありません。

下の段にいるあなたが劣っているのではなく、ただ順番があるというだけの話です。地下1階から地上2階へ行くには、いったん1階を通る。それだけのこと。

それに、人は一日のなかでも上がったり下がったりします。朝はおだやかだったのに、夕方には「なんで私ばっかり」になっている。そんなの、ふつうです。「いつも高いところにいる人」なんて、たぶんどこにもいません。

だから、落ちた日に「戻ってしまった」と思わなくていいんです。

今日からできる、小さなワーク3つ

ワーク1:今日の自分が、どの段にいるかを見分ける

地図は、現在地がわからないと使えません。当てるのは気分ではなく、口ぐせ・行動・体の3つです。あてはまるものが多いところが、たぶん今日の段です。

#### 無気力・恥の段

・口ぐせ:「べつに」「どうでもいい」「私なんて」
・行動:スマホを見ているのに内容が入ってこない。連絡の返事を開いたまま閉じる
・体:重い。あくびが多い。お風呂が面倒

#### 恐れの段

・口ぐせ:「もし〜だったらどうしよう」
・行動:同じことを何度も確認する。頭の中で先のことを何度も再生する
・体:そわそわする。息が浅い。肩が上がっている

#### 怒りの段

・口ぐせ:「なんで私ばっかり」「ふつう、そこは〜でしょ」
・行動:人のやり方が目につく。心の中で言い返す
・体:熱い。あご、肩、こぶしに力が入っている

#### 勇気・中立の段

・口ぐせ:「まあ、やってみるか」「人それぞれだよね」
・行動:小さいことがどうでもよくなる。用事がひとつ片づく
・体:息が入る。力が抜けている

見分けたら、「今日は怒りの段だな」と心のなかで名前をつけるだけ。変えようとしなくて大丈夫です。気づけた時点で、もう観る側に立てています。

ワーク2:その段から「ひとつ上」に行くために、実際にやること

段によって、やることが違います。今日の段のところだけ読んでください。

#### 無気力の段にいる日

体が先、言葉はあと。3分だけ外の空気を吸う/首の後ろをあたためる/「今日いやだったこと」を、小さくていいのでひとつだけ声に出す。感謝や目標は、今日は探さない。

#### 恐れの段にいる日

不安を、思いつくまま紙に全部出す。そのあと「自分で動かせること」と「動かせないこと」の2つに分ける。動かせるほうから、ひとつだけ丸をつけて、それだけやる。

#### 怒りの段にいる日

まず、安全な出し方で体の熱を下げます。紙に殴り書きする。その場で足踏みを30回する。ひとりで歩く。人に向けるのは、そのあとでも間に合います。
落ち着いてから、最後にこう聞いてみてください。

「本当は、何がつらかった?」

怒りの下には、たいてい「わかってほしかった」という気持ちが隠れています。ここまで来たら、もう一段上がっています。

#### 勇気の段にいる日

うまくいったかどうかを確かめる前に、「やった」という事実だけメモしておく。結果で採点しないことが、次の日の段を守ってくれます。

ワーク3:夜、3行だけ書く

寝る前に、ノートに3行。

  1. 今日、いちばん多くいた段はどこ?
  2. その段は、私に何を守らせていた?
  3. 明日、ひとつ上に行くための小さな一歩は?

3つめは、本当に小さくていいんです。窓を開ける。10分歩く。大きな一歩は、下の段からは踏み出せません。

よくある質問

Q. 落ち込んでいるとき、ポジティブな言葉は逆効果ですか?
逆効果というより、「届かない」ことが多いです。今の段から遠すぎる言葉は、心が受け取れずに素通りします。まずは、ひとつ上の言葉から試してみてください。

Q. 怒りを出したほうがいいということですか?
いいえ、「怒っていい」とおすすめしているわけではありません。お伝えしたいのは、怒りが出てきた自分を悪者にしなくていいということです。出し方は、人ではなく安全な場所に。そして怒りに住み続けないこと。この2つが大事です。

Q. 何度も下の段に戻ってしまいます。
それがふつうです。私も毎日、行ったり来たりしています。戻ったことに気づけたなら、もう地図を持っている状態です。地図がある人は、迷っても帰り道がわかります。

まとめ:一段でいい。それで、じゅうぶんです

落ちている日に、ムリに上を向かなくていいんです。

必要なのは、遠い場所の景色ではなく、今いる場所からの、たった一段。

無気力から、ちょっとした苛立ちへ。苛立ちから、悲しみへ。悲しみから、「まあ、やってみるか」へ。

そうやって一段ずつ上がるほうが、実はずっと早いことがあります。

下にいるあなたが、劣っているのではありません。 順番があるだけです。今日の一段が、見つかりますように🌸

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※この記事は自己理解とセルフケアのための情報で、医学的な診断や治療ではありません。つらい状態が続くときや、気になる症状があるときは、医療機関にご相談ください。

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