「自分と向き合ったのに、前より苦しくなった」
「インナーチャイルドのワークをしたら、何日も引きずってしまった」
「深いところを見るのが、正直こわい」
そんなふうに感じたこと、ありませんか。
じつは私も、同じところでずっとつまずいていました。
よかれと思って過去を掘って、その日はスッキリしたのに、翌日どんよりして動けなくなる。「私はまだ癒えていないんだ」と、余計に自分を責める。その繰り返しでした。
でも今なら、あのとき何が足りなかったのかがわかります。
ワークが合わなかったわけでも、あなたが弱いわけでもないんです。
潜る前の準備を、まるごと飛ばしていた。 ただ、それだけでした。
※読んでいてつらくなったら、途中でやめて大丈夫です。深い傷は、ひとりで掘らずに専門家と一緒に見ていくのが安全です。
船は、港があるから沖に出られる
想像してみてください。
一隻の船が、沖に出ようとしています。深いところには、まだ見たことのない景色がある。だから行きたい。
でも、そのとき船乗りが真っ先に確認するのは、沖の地図ではありません。
「嵐が来たら、どこに帰るか」 です。
戻れる港がある船は、思いきり遠くまで行けます。時化てきたら引き返せばいいと知っているから、恐れずに舵を切れる。
逆に、帰る場所を決めないまま沖に出た船は、少し波が高くなっただけで動けなくなります。
自分の心を見にいくときも、まったく同じなんです。
過去、傷、インナーチャイルド。そこは深くて、大事な場所です。
でも、深く潜れる人と、潜ると苦しくなる人の違いは、強さではなく「港があるかどうか」。
港がないまま潜ると、何が起きるか
港のないまま深いところに触れると、体のほうが先に反応します。
胸がざわざわして止まらない。夜、眠れない。頭のなかがぐるぐるして、体の感覚がなくなっていく。
これは、あなたの心が弱いから起きているのではありません。この章でお話しした「心の火災報知器」(扁桃体)が、鳴りっぱなしになっているのかもしれません。
報知器が鳴っているあいだ、考える司令塔のほうはうまく働けません。だから、その状態でどれだけ深く分析しても、気づきは入っていかないんです。むしろ「思い出しては苦しい」という体験だけが、体に積み重なってしまうことがあります。
ここで、とても大事なことをひとつ。
「まだつらい」は、失敗の証拠ではありません。
ただ、今日はここまで、という合図です。止まっていい。閉じていい。それは逃げではなく、船乗りとしての正しい判断です。
港は「気持ち」ではなく「体」でつくる
ここが、いちばんお伝えしたいところです。
安心って、気持ちの問題だと思われがちですよね。
でも実際は、体のほうが先なんです。
私たちの体には、アクセルとブレーキ(自律神経)があります。深いところに触れると、アクセルが踏まれっぱなしになる。そのときに「安心しよう」と念じても、まず届きません。届くのは、体からの信号のほうです。
– 息を吐くほうを長くする
– 足の裏が床についているのを感じる
– 手のひらのあたたかさを感じる
こういう単純なことのほうが、脳に「今は危険じゃない」と伝えてくれます。
港は、言葉ではなく体でつくる。 これが順番です。
そしてもうひとつ。安心した瞬間に何かが起きた経験があると、ゆるむこと自体がこわく感じられる——という方もいます。だから、いきなり大きな安心を目指さなくていいんです。30秒でいい。小さな港から始めます。
深く潜る前に決めておく、3つの約束
港をつくると同時に、自分と約束をひとつずつ結んでおきます。
1. つらくなったら、途中でやめていい。
最後までやりきることに意味はありません。戻れることのほうが、ずっと価値があります。
2. いちばん大きな相手・いちばん重い記憶からは始めない。
軽いところから順に、が鉄則です。船も、近場から慣らしていきます。
3. 深い傷は、ひとりで掘らない。
子ども時代の深い傷や、思い出すと体が固まるような出来事は、専門家と一緒に見ていくのが安全です。ひとりでできることと、そうでないことがあります。
この3つを先に決めておくだけで、ワークの安全性はぐっと上がります。
今日からできる、小さなワーク3つ
この3つは、この講座のどのワークをやるときも「その前」にやってほしい安全装置です。この記事に戻ってきてもらえるように、手順をていねいに書いておきますね。
ワーク1:30秒の呼吸で、港の灯りをともす
やり方はこうです。
- 座ったままで大丈夫です。背もたれに寄りかかって、肩の力を抜きます。
- 鼻から5秒かけて、すっと吸います。
- 口から「ふぅ〜」と、ため息をつくように10秒かけて吐きます。
- これを3回だけ。それで終わりです。
コツは、吸うことより吐くほうを長くすることです。吐く息が長くなると、体のブレーキ側が働きやすくなります。
うまくいかないときは、こんなふうに。
– 息が吸えない感じがするときは、「吸う」ではなく「入ってくる」に切り替えてみてください。こちらが吸わなくても、ゆるめれば空気は勝手に入ってきます。
– 秒数が苦しいときは、5秒・10秒にこだわらなくて大丈夫。「吸う」より「吐く」が少し長ければ、それで十分です。
– 呼吸に集中すると逆に苦しくなる方もいます。その場合はワーク1を飛ばして、ワーク2から始めてください。
やるタイミングは、ワークを始める前に1回、終わったあとに1回。この2回だけでも、感触がずいぶん変わります。
ワーク2:体に戻る、3つの錨(いかり)
頭のなかがぐるぐるしているときは、体の感覚が消えかけています。錨を下ろすように、3つだけ確かめます。
- 足の裏——床についている感じを探します。見つからなければ、かかとを2〜3回、軽く床にトンと下ろしてみてください。「ここに床がある」がわかれば十分です。
- 手のひら——手のひらどうしを10秒ほどこすって、あたたかくなったのを感じます。そのまま、あたたかい手を頬かおなかに当ててもいいです。
- 鎖骨のあたり——両手で自分の鎖骨の下あたりを包みます。吐く息ごとに、心の中で「私は、ここに戻ってきても安全」。3呼吸ぶんで大丈夫です。
知っておいてほしいことが、3つあります。
– 涙が出てきたら、それは失敗ではなく、体に戻ってきているサインです。
– 3つ全部やらなくていいです。いちばん「戻れる感じ」がしたものを、あなたの錨にしてください。
– 感覚がまったくつかめない日もあります。それも普通のことです。「今日はつかめなかった」とわかったこと自体が、体に注意が向いた証拠です。
やるタイミングは、ぐるぐるが始まった瞬間。早ければ早いほどラクです。
ワーク3:不安を「過去・未来・他人」に仕分ける
心が沖に流されているときは、紙に不安を書き出して、3つの箱に仕分けてみてください。
やり方はこうです。
- 頭にあることを、順番も文章もととのえずに、思いつくまま紙に書き出します。5分くらい。
- 一つひとつに、【過去のこと】【未来のこと】【他人のこと】のどれかを書き添えます。どれにも入らないものは、そのまま残します。
- 残ったところから、5分以内にできることを1つだけ選んで、終わらせます。
過去・未来・他人の3つは、今この瞬間に、あなたが動かせるものではありません。動かせないものと、動かせるものが混ざったまま抱えているから、重くなるんです。仕分けは、なかったことにする作業ではなく、置き場所を分ける作業です。
「正しい行動」でなくて大丈夫。「今、動ける行動」を選びます。コップを洗う、窓を開ける、その程度で十分です。
ひとつだけ注意を。書き出しているうちにつらくなってきたら、途中でやめて、ワーク1かワーク2に戻ってください。書ききることが目的ではありません。
よくある質問
Q. 港をつくるのに、どれくらいかかりますか?
人によって違います。何日で完成というものではなく、育てていくものだと思ってください。30秒の呼吸を1日に何度か続けているうちに、「戻れる感じ」が少しずつ育っていくことがあります。
Q. ワークの途中で泣いてしまいます。やめたほうがいいですか?
涙そのものは、止まるサインではないことが多いです。ただ、涙が止まらない・体が固まる・そのあと何日も引きずる、という場合は、いったん閉じて港に戻ってください。そして、専門家と一緒に見ていく選択も考えてみてください。
Q. 港ができる前に、深いワークをやってしまいました。
大丈夫です。今から順番を戻せばいいだけ。掘るのを一度止めて、しばらく「戻る練習」だけをする期間にしてみてください。そのあとのほうが、同じワークがずっと届きやすくなります。
まとめ:先に港。それから、沖へ
深く潜れる人は、強い人ではありません。
帰る場所を持っている人です。
自己分析も、インナーチャイルドのワークも、潜在意識の書き換えも、港があってはじめて安全に届きます。順番を変えるだけで、同じワークの感触がまるで変わることがあります。
急がなくて大丈夫。今日は30秒の呼吸だけでも十分です。それが、あなたの最初の港になります🌸
▶ あわせて読みたい:インナーチャイルドの癒し方 完全ガイド
▶ あわせて読みたい:潜在意識の書き換え方 完全ガイド
※この記事は自己理解とセルフケアのための情報で、医学的な診断や治療ではありません。つらい状態が続くときや、気になる症状があるときは、医療機関にご相談ください。
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ひとりで向き合うのが難しいと感じたら
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