頭ではわかっているのに変われない理由|脳が書き換わるまでにかかる時間

「もう、原因はわかったはずなのに」
「あんなに腑に落ちたのに、現実は何も変わらない」
「私、やり方を間違えているのかな」

そんなふうに、焦っていませんか。

私も、まったく同じでした。

「そうか、私はずっとこう思い込んでいたんだ」と、深く腑に落ちた日があったんです。なのに一週間後、同じような場面で、同じように胸がぎゅっと縮んでいる。

「あれは気のせいだったのかな」と思いました。

でも今は、こう思っています。

あの日、変わったところは、ちゃんとあった。ただ、変わるのに時間がかかる場所が、別にあっただけ。

潜在意識の書き換え方そのものは、第3章でお話ししました。今日はその続き、脳の側では何が起きているのかの話です。

森のなかに、新しい道をつくる話

脳のなかの考えグセ・感じグセを、森のなかの「道」だと思ってみてください。

同じ考え方を何度もすると、そこは通り道になります。最初は草むら。何度も通ると獣道になって、さらに通ると舗装道路になる。

「傷つくくらいなら、期待しないでおこう」がぱっと出てくるのは、そこがもう舗装道路だからです。考えているというより、勝手に流れている。

そして「わかった!」の瞬間に起きているのは、新しい道の、入り口ができること

でも入り口ができただけでは、古い舗装道路はまだそこにあります。急いでいるとき、足は歩き慣れたほうへ勝手に向かう。

これが、「頭ではわかっているのに変われない」の正体でした。

「わかった瞬間」に、脳では何かが起きている

まず、うれしいほうの話から。

脳には、経験によって配線を組み替える力があると考えられています。むずかしい言葉では「可塑性」と言いますが、要するに脳は、途中で配線を変えられるということです。

そして組み替えが起きやすいのは、予想が外れた一瞬だと言われています。

「え? そうだったの?」と、ふっと止まる数秒。ここで、「心の火災報知器」の記事でお話しした扁桃体が静かになって、体の力が抜ける。そして、意味が差し替わる。——そういうことが起きていると考えられています。

そのサインが、とても静かなんです。

– ふっと肩の力が抜ける
– 大きなため息が出る
– 言葉が出てこなくなる

大泣きするより、こういう地味な瞬間のほうが多いんです。

そして残念ながら、この一瞬は長く続きません。考え続けると分析や評価が入ってきて、心の防御がまた立ち上がるからです。

だから、1回の気づきで人生が丸ごと変わらなかったのは、失敗ではありません。

時間がかかるのは、体に染みたほう

一瞬で入り口ができるのは、意味の層です。でも、体に染みたクセは、そうはいきません。

胸がドキッとする。胃が縮む。相手の表情を先回りして読んでしまう。

これは考えて出しているものではなく、体が覚えている反応です。何百回と通った道が、そのまま残っている。

そして古い道は、消すというより、上書きしていくものだと言われています。

できるのは、新しい道を通ること。通るたびに新しい道が踏み固められて、古い道には少しずつ草が生えてくる。上書きであって、削除ではないんです。

期間は3週間、3か月といろいろ語られていますが、正直なところ言い切れません。人によっても違います。

私の場合、「あれ、前より反応が小さいかも」と気づいたのは数か月後でした。しかも一直線ではなく、良くなったり戻ったりを繰り返しながら、です。

だから「まだ出てくる」は、効いていない証拠とは限りません。次の層に触れているサイン、という見方もあります。

いちばんもったいないのは、入り口でやめてしまうこと

ここが、いちばんお伝えしたいところです。

新しい道の入り口をつくって、3回歩いて、「変わらないな」とやめる。そしてまた別の方法を探して、新しい入り口をつくって、また3回でやめる。

これを繰り返すと、入り口だらけで、道が1本もない森ができあがります。昔の私が、これでした。

方法が悪かったのではなくて、どれも入り口までしか行っていなかった。「効かない」と判断するには、まだ早すぎたんです。

では、「これは合わないかも」はどう判断する?

ただしこれは、「効かなくても、がまんして続けなさい」という話ではありません。判断していい目安も、ちゃんとあります。

やっていて苦しくなる。怖くなる。自分を責める材料になっている。——そう感じるなら、それは合図です。合わない方法を、無理に続ける必要はありません。

やめてもいいし、休んでもいい。続けるかどうかを決めるのは、いつでもあなたのほうです。「早く変わらなきゃ」と自分を追い立てる道具になっているなら、それはもう、いったん置いていいものだと私は思っています。

変化は「現実」より先に、アンテナに出る

じゃあ、途中経過は何を見ればいいのか。私が目安にしているのは、脳のアンテナです。

脳には、大量の情報から「今の自分に必要なもの」だけを拾い上げるはたらきがあると言われています。だから変化は、まずこんな形で出てきます。

– これまで素通りしていた言葉が、急に目に留まる
– 同じ話を聞いているのに、違う意味に聞こえる
– 「そういえば、あの人こんなこと言ってたな」と、急に思い出す

これは、アンテナの設定が変わりはじめたサインかもしれません。

そして現実が動くのは、この「あと」です。

拾う情報が変わる → 選ぶことが変わる → 行動が変わる → 周りの反応が変わる。

だから「まだ何も変わっていない」と感じている時期にも、水面下では順に進んでいることがあります。

今日からできる、小さなワーク3つ

ワーク1:「気づいた日」を1行だけ残す

日付と一文だけでいいです。「◯月◯日、私は”期待しないほうが安全”だと思っていたと気づいた」

人は変わったあと、変わる前の自分を忘れます。3か月後に読み返すと、進んでいたことがわかります。

ワーク2:消えたかどうかではなく、大きさを見る

イラっとした日、胸が縮んだ日に、10段階でメモしてみてください。「今日は7」「今日は5」「立ち直るまで3日→今日は半日」

ゼロかどうかで判定すると、ほぼ必ず「まだダメだ」になります。見るのは、大きさと、戻ってくるまでの速さです。

ワーク3:ゆるんだ一瞬で、終わりにする

古い反応が出たときの、短いやり方です。

  1. ラベルだけ貼る「今、昔の反応が出ているな」。分析はしない
  2. 体に「今」を思い出させる。背中が椅子や壁に触れているのを、ただ確かめるだけでいいです(呼吸や足の裏を使うやり方は、第5章の最後で詳しくお話しします)
  3. 心のなかで一言「あのとき、私は生きようとしてたんだね」
  4. ふっと力が抜けたら、そこで終わり

長くやるほど効く、というものではありません。ゆるんだところでやめるのがコツです。

よくある質問

Q. 結局、どれくらいで変わるんですか?
正直に言うと、断定できません。ただ「気づいた瞬間に変わる部分」と「時間をかけて薄れていく部分」の両方がある、という前提でいると、焦りがずいぶん減ります。

Q. 何度も同じところに戻ってしまいます
古い道がまだ通れる状態にあるからで、失敗ではありません。見るところを「戻らないこと」から「前より早く抜けられたか」に変えてみてください。

Q. 気づくだけでは意味がない、ということですか?
いいえ、逆です。気づきは入り口をつくる大事な作業。ただ、そのあと何度か通る時間が要るだけなんです。

まとめ:変わっていないのではなく、まだ道の途中

「わかったのに変われない」とき、あなたは止まっているわけではありません。

意味の層では、もう新しい入り口ができている。
体の層が、追いついてくる途中にいる。

その途中で「効かなかった」と判断してしまうのが、いちばんもったいない。

そして、苦しくなる方法だけは、続けなくていい。

私はこの2つを持てるようになってから、ようやく1本の道を歩き続けられるようになりました。

あなたの森の道も、歩くたびに、すこしずつ踏み固められていきますように🌸

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※この記事は自己理解とセルフケアのための情報で、医学的な診断や治療ではありません。つらい状態が続くときや、気になる症状があるときは、医療機関にご相談ください。

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