※読んでいてつらくなったら、途中でやめて大丈夫です。深い傷は、ひとりで掘らずに専門家と一緒に見ていくのが安全です。
「大したことじゃないのに、心臓がバクバクする」
「考えても仕方ないって、わかってるのに止まらない」
「私って、どうしてこんなに気にしすぎなんだろう」
自分の性格のせいだと、ずっと思ってきたかもしれません。
ただし、ひとつだけ先にお伝えします。動悸や息苦しさ、めまいがくり返し起きるときは、まず体のほうに原因がないかを確かめておくことが大切です。内科で「体は大丈夫」とわかっているだけで、その後がずいぶんラクになります。順番として、そこが先です。
そのうえで、ここからは「体は大丈夫だったのに、それでも不安が止まらない」というときの話をしますね。
私にも、そういう夜がたくさんありました。急に不安になって、同じことを何時間もぐるぐる考えて、朝になっても答えは出ていない。
でも、あるとき知ったんです。あれは、私の性格が弱いから起きていたんじゃなかった。脳のなかで、あるスイッチが入りっぱなしになっていただけでした。
パンを焼いただけで、鳴る報知器
台所の火災報知器を思い浮かべてみてください。感度が上がりすぎていると、パンをこんがり焼いただけで、けたたましく鳴り出しますよね。
家は燃えていません。けれど、鳴っている音は本物の火事のときとまったく同じです。
不安が止まらないときに起きているのは、これとよく似たことです。
私たちの脳には、危険を見張っている小さな部分があります。アーモンドのような形をしていて、扁桃体と呼ばれます。この講座では「心の火災報知器」と呼びますね。
心の火災報知器は、考えるより速い
この報知器のすごいところは、とにかく速いことです。目の前にヘビがいたら、「逃げよう」と考える前に、もう体が飛びのいている。その速さです。
でも、速さには代償があります。
速いぶん、雑なんです。
過去につらい記憶がある人ほど、報知器の感度は上がりやすいと言われています。怒鳴られた記憶、置いていかれた記憶、我慢して笑っていた時間。それが刻まれていると、既読がつかない、声のトーンがいつもと少し違う──それくらいの刺激でも「危ない」と判定されます。
家は燃えていません。でも、報知器のほうは本物の火事だと思っている。
だから、心臓がバクバクして、手が冷たくなって、息が浅くなる。これは気の持ちようではなく、体が本気で守りに入っている状態なんです。
「考える司令塔」は、報知器が鳴ると席を立つ
おでこの奥のあたりに、計画を立てたり、感情にブレーキをかけたりする部分があります。前頭前野、この講座で言う「考える司令塔」です。ふだんは、この司令塔が報知器に「大丈夫、パンだよ」と教えてくれます。
でも報知器が大音量で鳴り出すと、脳の働きはそちらに集まって、司令塔は一時的に席を立ってしまいます。白か黒かでしか考えられなくなったり、「もうだめだ」「一生このまま」と極端な結論に飛んだりするのは、このときです。
「冷静に考えよう」がうまくいかないのは、あなたの努力が足りないからではありません。冷静に考える担当者が、そのとき席にいないからなんです。
目指すのは、ゼロではなく「戻れること」
報知器が鳴ると、体はアクセルを踏みます。心臓がドキドキして、肩に力が入って、頭が高速で回る。不安も、イライラも、焦りも、ここで起きています。
そして、戦うことも逃げることもできない状況が続くと、今度は動きそのものが止まってしまうことがあります。何も感じない、体が重い、布団から出られない。これも、あなたを守るために起きている反応です。
どちらも、あなたが弱いから起きているのではありません。
そして、いちばんお伝えしたいのはここ。
目指すのは「不安をゼロにすること」ではありません。落ち着いた状態に戻れる道を、自分で1本持っておくことです。
不安が出ること自体は止められません。それは装置の仕事だからです。
ぐるぐる思考が止まらない理由
頭のなかの言葉(内なるおしゃべり)は、司令塔がやっているシミュレーションの機能です。先回りして考えることで、危険を避けようとしてくれている。
だから報知器が鳴りっぱなしのとき、脳は「まだ危険の処理が終わっていない。考え続けなければ」と受け取っています。
ここに、落とし穴があります。
考えている内容を解決しても、ぐるぐるは止まりません。
ひとつ答えが出ると、脳はすぐ次の「もしも」を持ってきます。原因は考えの中身ではなく、神経が警戒モードのままだからです。
かといって「考えちゃだめ」と止めにかかるのも逆効果になります(この理由は第1章でくわしくお話ししているので、記事末にリンクを置いておきますね)。
だからやることは、考えを止めることではなくて、先に体のほうを落ち着かせてあげることなんです。
今日からできる、小さなワーク3つ
ワーク1:吐く息だけ、長くする
- 鼻から4秒かけて吸う
- 口から6〜8秒かけて、細く長く吐く
- これを3回だけ
コツは、吸うことを頑張らないこと。しっかり吐けば、空気は勝手に入ってきます。不安なとき、私たちは「吐けていないまま吸い続けている」ことが多いんです。
吐く息を長くすると、体のブレーキ側の神経が働いて、報知器の音量がすっと下がることがあります。
※呼吸のほかにも、体を落ち着かせておく方法はいくつかあります。それは第5章の最後で、深く潜る前の準備として詳しくお話ししますね。
ワーク2:「いま、報知器が鳴ってる」とラベルを貼る
不安が来たら、こう言ってみてください。
「あ、いま脳が安全確認をしてるんだな」
分析しなくていいです。原因を探さなくていいです。名前をつけるだけ。それだけで、「不安に飲み込まれている私」から「不安を見ている私」へ、立ち位置が少し変わります。
ワーク3:鳴った時間と場面を、1行だけ残す
不安が落ち着いたあとに、メモアプリでも手帳でもいいので、1行だけ書いておきます。
– いつ(何時ごろ/どんな日か)
– どこで、誰といたとき(ひとりだった、なども含めて)
分析はしません。ただ並べておくだけです。3日、4日とたまってくると、「夕方に多い」「返信を待っているときが多い」というふうに、自分の報知器が反応しやすい場面がうっすら見えてきます。
見えると、対策ではなく心構えが変わります。「また来た、私はだめだ」が「この時間帯は鳴りやすいんだったな」に変わるだけで、ずいぶん違うんです。
よくある質問
Q. 不安は、なくせますか?
なくす方向ではなく、「戻れるようになる」方向がおすすめです。不安はあなたを守るための装置なので、鳴ったあとに落ち着く道を持っておくほうが現実的です。
Q. 呼吸をしても落ち着かないときは?
呼吸に集中するとかえって苦しくなる方もいます。そのときは、冷たい水をゆっくり飲む、冷えた缶を握る、床を足で踏みしめる。体の外側からの刺激のほうが届くことがあります。
Q. これは心の問題ですか?体の問題ですか?
どちらもです。ただ順番として、体と神経を先に落ち着けたほうが、心のワークがずっと届きやすくなります。
それでも強い発作がくり返し起きるときは、一度、医療機関に相談してみてください。
まとめ:あなたは、気にしすぎではない
不安が止まらないとき、あなたが弱いわけではありません。
心の火災報知器が、あなたを守るために鳴っている。
考える司令塔が、その音の大きさに一時的に席を外している。
起きているのは、それだけです。
私はこれを知ってから、夜中の自分をずいぶん許せるようになりました。「また不安になった、私はだめだ」ではなく、「あ、鳴ってるな。吐く息を長くしよう」に変わったんです。
報知器の感度は、安心を重ねるなかで少しずつ変わっていくと言われています。急がなくて大丈夫です。あなたの夜が、すこしでも静かになりますように🌸
▶ あわせて読みたい:ネガティブ思考をやめようとするほど、苦しくなる理由
▶ あわせて読みたい:インナーチャイルドの癒し方 完全ガイド
※この記事は自己理解とセルフケアのための情報で、医学的な診断や治療ではありません。つらい状態が続くときや、気になる症状があるときは、医療機関にご相談ください。
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